肝臓の隣にいる彼女

深夜。揚げ物。締めのアイス。おまけに甘いお酒。

胆のうちゃんはいつものようにぷくっとふくらみ、ためていた胆汁をぎゅっと押し出す。

 

胆のうちゃん👧「ほんま、どんだけ脂流し込む気なん。」

 

その隣で肝臓は何も言わずに働いている。ただ、黙々と毒を分け、脂をさばき、糖を整える。

 

👧「……また脂、多ない?」

 

ためた胆汁をぎゅっと送り出す。何度も。何度も。最近はそのたびに少しだけ違和感がある。きゅっ。小さな痛みが走る。ほんの一瞬小さく引っかかるような感覚。胆のうちゃんは眉をしかめる。

 

👧「……うっ……ん?」

 

でもすぐに流し、また胆汁をためる。胆汁の底には小さな粒が沈んでいた。きらり。ほんの小さな砂みたいなかけら。コレステロールの結晶。まだ痛くもないし、流れを止めるほどでもない。でも——少しずつ、少しずつ、そこにたまっていく。胆のうちゃんは見て見ぬふりをした。

 

👧「……別にこれくらい。……今は、それどころちゃうねん」

 

ちらりと隣を見る。肝臓は今日も黙って働いている。少し重たそうに、少し疲れた顔で。それを見ると自分の違和感なんて後回しになる。

 

👧「べ、別に平気やし。」また、きゅっ。さっきより少しだけ強い引っかかり。胆のうちゃんは一瞬だけ目を閉じる。

 

👧「……だいじょうぶ。」誰に言うでもなく、小さくつぶやく。

 

肝臓「どうした?」

 

👧「な、なんでもないyo!それより、そっちのほうが問題やろ」笑ってみせる。

 

肝臓は少し怪しそうに見る。でも、何も言わない。胆のうちゃんは胸の奥で思う。この小さな石がいつか痛みに変わることをほんとは少しだけ知っている。それでも——

 

👧「今は、あんた優先やし」

 

そう言ってまた胆汁を送り出す。少し痛む。でも止めない。肝臓の隣で誰にも気づかれず、自分の中にも“静かな異変”を抱えながら。今日も彼女は強がっている。またひとつ小さな結晶が転がる。

 

👧「……増えてるやん。」思わず眉をしかめる。

 

ほんとは少し怖かった。この小さな粒がいつか大きくなることを。いつか突然、鋭い痛みに変わることを。でも肝臓の疲れた横顔を見ると自分のことなんて言えなかった。そしてまた、胆汁を送り出す。

 

肝臓「……お前、無理するなよ」

 

👧「え?」胆のうちゃんは目を見開く。

 

肝臓「気づいてへんと思ったか?」

 

👧「……気づいてたん?」

 

肝臓は少し笑って「隣におるんやから」

 

その一言に胸がきゅっとなる。胆石のせいじゃない。

 

👧「……ほんま、そういうとこやで…べ、別に心配してもらわんでもええし。」思わず顔をそらす。でも少しだけ、肩の力が抜ける。

 

——外では。ヒトがまた、夜食をひとくち。胆のうちゃんは小さく息を吸う。

 

👧「よし。仕事や。」

 

毒舌を吐きながら少し痛みをこらえながら、肝臓のすぐ隣で自分の中にも静かな異変を抱えながら。それでも今日もいちばん近くでいちばん彼を支えているーー