ワタシの分岐点(第3章)

物語はさらに静かで重い章へ進むーー分岐点

 

ワタシはまだ無口だ。けれど中では以前とは違うことが起きている。脂肪が長く居座ると細胞は疲れ、傷つく。酸化ストレスが増え、炎症がくすぶる。すると免疫細胞が集まり、「修復」を始める。修復は優しい響き…だが、繰り返される炎症のあとに残るのは柔らかな組織ではないことを知っているか?

 

ここで目を覚ますのが星細胞ーーせいちょうぼうと言う。いつもは肝臓の中で静かにビタミンAを蓄えている控えめな存在。しかし傷や炎症の刺激を受けると「修理係」に変わる。

 

彼らはコラーゲンという硬い繊維を作り、壊れた場所を埋めていく。本来は傷を守るために働く。だが炎症が続くとその繊維が増えすぎてしまう。その線維は少しずつワタシを硬くする。脳では腫瘍の発生源となり、血液の通り道は狭くなり流れは滞る。

 

ワタシは必死に働く。解毒、代謝、合成。けれど正常な細胞は減り硬い組織が場所を奪う。これが肝硬変の仕組み。慢性的な炎症と線維化の積み重ねから静かに進んでいく戻りにくい変化。ワタシは今日も黙っている。柔らかかったはずの自分が少しずつ別の形になっていくのを感じながら…

 

外でヒトの生活は変わらない。朝は抜くか、甘いカフェラテと菓子パンだけ。昼は急いでラーメンや丼もの。野菜は飾りのように少し。夕方は甘い飲料でひと息ついて、夜は揚げ物と白いごはん。「今日はお酒飲んでないし」が安心材料になる。深夜に小腹が空いてポテトチップスを開け、炭酸のふたが回る。ワタシはそのたびに受け取るーー糖と脂。

 

外の世界はいつも通り。仕事も会話も笑顔もある。内側では血液の通り道が少し狭くなり、柔らかさが少し失われている。ワタシは何も言わない。言うことができない。食卓が変わらない限りワタシはもう元には戻らない。脂肪のうちは“引き返せる坂道”。硬くなってしまうと“戻りにくい石段”。ワタシは文句を言いません。でも応えることはできます。あなたがどこで気づけるかどうかがとても大きい。

物語はまだ続く静かに確実に・・・(つづく)