静かな会議室。誰も口を開かなかった。レプチンさんも、グレリンくんも、ドーパミンちゃんも。視床下部課長は一枚の資料を静かに机へ置いた。表紙にはこう書かれていた。
「改善報告書」
グレリンくんが驚く🍜「改善……?レプチン抵抗性って、治ることがあるの?」
課長はゆっくりとうなずいた👨🔬「医学では『完全に治る』とは言えません。しかし、多くの研究で改善する可能性が示されています」
会議室の空気が少し変わった。レプチンさんは悪くなかった。課長はスクリーンを映した。そこには数年前の写真が並んでいた。
脂肪細胞部署。一つ一つの脂肪細胞が、今よりも小さい。この頃はレプチンさんもそれほど忙しくなかった。
課長が説明を続ける👨🔬「脂肪細胞は、ただ大きくなるだけではありません。大きくなり過ぎると、酸素が届きにくくなり、細胞は苦しくなります。」スクリーンには、パンパンに膨らんだ脂肪細胞が映る。
「すると脂肪細胞は助けを呼ぶために、炎症性サイトカインを放出します。これは本来、体を守るための反応です。しかし、その状態が何か月、何年も続くと、脳本部まで影響を受けてしまいます」
レプチンさんは静かにつぶやいた🟢「だから私は、毎日たくさん働いても届きにくくなっていたんですね……。」問題は脂肪細胞の"数"だけではなかった。
ドーパミンちゃんが質問した💃「脂肪細胞が多いことが悪いの?」
課長は首を振る👨🔬「正確には違います。問題なのは、脂肪細胞が大きくなり過ぎて、働き方が変わってしまうことです。」
スクリーンには二つの脂肪細胞が映る。左側は、小さく元気な脂肪細胞。右側は、大きく膨らみ、苦しそうな脂肪細胞だった。
👨🔬「健康な脂肪細胞は必要な量のレプチンを分泌しています。レプチンは脳へ向かい、『エネルギーは十分あります。』『食欲を少し抑えましょう。』『今のままエネルギーを使い続けましょう。』という指令を届けています」
レプチンさんが続ける🟢「私は、ただ『お腹いっぱい』を伝えるだけではありません。必要以上に食べ過ぎないようにしながら、体温を保ち、筋肉や内臓がいつも通り働けるよう、エネルギーの収支を整える仕事もしています」
課長はうなずいた👨🔬「そうです。レプチンは、『食べる量』と『使うエネルギー』のバランスを保つ司令役でもあります。しかし、脂肪細胞が大きくなり過ぎると、そのバランスを伝える情報が脳へ届きにくくなってしまうのです。しかし、大きくなり過ぎた脂肪細胞は、炎症を起こしやすくなり、レプチンも過剰に分泌するようになります。つまり、脂肪細胞の"質"が変わってしまうのです。」
【修復チーム出動】
課長が新しい資料を映した。タイトル:『受信システム修復計画』「脳本部では、改善が期待できることが4つあります」
第1班 体脂肪を少し減らす
👨🔬「脂肪細胞が少し小さくなるだけでも、炎症性サイトカインは減少し、レプチンの働きが改善する可能性があります」
第2班 よく眠る
課長が続ける👨🔬「睡眠不足はグレリンを増やし、レプチンの働きを低下させることが分かっています」
グレリンくんが頭をかく🍜「寝不足の日に僕が元気になる理由って、それだったんだ」
第3班 体を動かす
スクリーンには散歩する人の映像が映る。👨🔬「運動は体脂肪を減らすだけではありません。視床下部の炎症を和らげ、インスリン抵抗性やレプチン抵抗性の改善にもつながる可能性があります」
第4班 食べ方を見直す
ドーパミンちゃんが少し緊張した顔になる。課長は優しく微笑む👨🔬「あなたを嫌う必要はありません。甘い物も、揚げ物も、おいしい食事も、人生を豊かにしてくれます。問題はそればかりが続くことです。野菜、たんぱく質、食物繊維を取り入れながら、報酬系が暴走しにくい環境をつくることが大切なのです」
会議の終わりにレプチンさんが立ち上がった🟢「私は明日も脳本部へ向かいます」
課長は力強くうなずく👨🔬「お願いします。受信システムは壊れた機械ではありません。細胞には回復する力があります。生活習慣を少しずつ変えることで、受け取り方が改善する可能性は十分あります」
会議室の空気が、少しだけ明るくなった。その時だった、ドーパミンちゃんが意味ありげに笑った。
💃「でも……。私は、そんなに簡単には負けないよ。」
グレリンくんも笑う🍜「僕も、お腹が空いたらちゃんと呼ぶからね!」
課長は静かに腕を組んだ👨🔬「そうでしょう。なぜ、人は分かっていても、つい手が伸びてしまうのか。なぜ、報酬系はこれほど強い力を持っているのか?」
スクリーンに新しい議題が映し出された。『報酬系は、なぜ理性より先に動くのか』脳本部最大の謎を解く、新たな会議が始まろうとしていた。つづくーー

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