沈黙の臓器が告げたことは?

【内臓会議 — 遅れてきた臓器 —】

会議は、いつも通り始まっていた。

肝臓「負担は減ってへん…」

血管🩸「流れも重たいままや…」

腸⚕️「バランスも戻りきってへん」

 

誰も驚かない。もう、日常になっているから。——そのとき、遅れてひとつの気配が入ってくる。足音はないが空気が少しだけ張りつめる。

膵臓🌚「……すまん、遅れた」

 

全員がそちらを見る。

腸⚕️「珍しいな、お前が来るん」

血管🩸「普段は表に出てこんのに」

膵臓は少し黙る。そして静かに言う🌚「……もう、隠しきれん」

 

一瞬、空気が止まる。

肝臓「何をや?」

膵臓はゆっくりと続ける🌚「最近な、ずっと出し続けてるんや」

腸⚕️「何を?」

膵臓🌚「インスリンや」

血管がわずかに反応する🩸「……それって、普通やろ?」

膵臓は首を振る🌚「量が、ちゃうねん。前より、ずっと多い。それでも、追いつかへん時がある」

腸⚕️「どういうことや…?」

膵臓🌚「甘いもんが入るたびに、急いで出す。何回も、何回も」

肝臓「……無理してるな…」

膵臓🌚「せや。無理して、なんとか保ってるだけや」

血管が低く言う🩸「それでも、血の中は安定してるように見えるけど…?」

膵臓は目を閉じる🌚「そう見えてるだけや」

 

その一言で空気が変わるーー

膵臓🌚「効きが、悪くなってきてる」

腸⚕️「……効き?」

膵臓🌚「同じ量出しても、前みたいに糖が下がらん。だから、もっと出す。それでも、また足りん」

肝臓「……それは…」

膵臓は静かに告げる🌚「…インスリン抵抗性や…」

 

その名前が場に落ちる。軽くない。もう、戻るだけの話ではない。その名前が落ちたあと肝臓が動揺しながら問う。

肝臓「……な、なんで、そうなった?」

膵臓は少しだけ間を置いてーー🌚「理由は、ひとつやない…」

腸が目を細めるーー⚕️「…言うてみ…」

膵臓🌚「まず、糖が多すぎる。入るたびに急いで出す。それが何度も続くと体が慣れていく」

血管🩸「慣れる…?」

膵臓🌚「せや。“効かんでもええ状態”に近づく。それに脂肪も増えとる。内臓の周りにたまった脂肪がインスリンの働きを邪魔する」

腸⚕️「こっちは炎症もあるで」

膵臓🌚「せやな。乱れた腸内環境が体の中に小さな炎症を広げる」

血管🩸「その炎が、こっちも傷つけてる…」

膵臓🌚「運動不足も重なっとる。筋肉が動かへんと、糖の行き場が減る」

肝臓「……全部、つながっとるっちゅうわけやな」

 

——そのあと。血管が低く口を開く🩸「……もう一個、ええか?そういえば最近な、圧も上がってきてるわ」

腸⚕️「圧?」

血管🩸「血圧や」

肝臓が静かに反応する「……理由は?」

血管は、少しだけ間を置く🩸「インスリンや」

一瞬、沈黙して膵臓がうなずく🌚「多く出しすぎると、体が水とナトリウムを溜め込みやすくなるからな

血管🩸「せや。量が増えれば、流れる圧も上がる」

腸⚕️「それだけやないやろ…」

血管🩸「せやな。インスリンが多い状態が続くと血管の壁も硬くなってくる」

肝臓「……しなやかさがなくなる…」

血管🩸「結果、押し返す力が強くなる。つまり——圧が上がる」

 

——外では。ヒトが肩を回す。「なんか最近、ちょっと頭重いな」でも気にしない。

——内側。血管🩸「まだ軽い段階や。でも確実に変わってきてるで」

 

膵臓🌚「ただ出してるだけやのに、こんなとこまで影響が出るんや」

肝臓「我らは全部、つながっとるからな…」

 

誰も否定しない。できない。血管が最後に、ぽつりと言う🩸「……そのうち、“数値”で出るで」

膵臓は小さくうなずいて、🌚「ひとつずつは小さい。でも、毎日続くと——」

言葉を切る。誰も続きを聞く必要はない。もう、わかっているから。

 

 ——外では。ヒトが甘い飲み物を口にする。「疲れたし、これくらいええやろ」

——内側。膵臓がまた動く。何も言わずに。ただ出す。肝臓は受け取り、血管は流し、腸はまた整えようとする。

でも——前とは違う。

 

膵臓🌚「……このままやと持たんで。今は出せてる。でもな——出せてるうちにしか、戻されへんから」

 

——会議は静かに終わる。見えない変化がそろそろ“見える形”になり始めている。もう“気づかんでも大丈夫な段階”は終わった…戻れるかどうか…次にヒトはどんな選択をするのか?