体の右奥で育つアレ…(序章)

【序章:「右奥で働く者は、今日も何も言わない」】

ワタシは体の右奥、誰にも見えない場所で働いている。痛まない。しゃべらない。だから存在感も薄い。でも仕事量だけは派手。今日も血液の川が流れてくる。栄養、老廃物、アルコール、脂・・・全部ここを通る。

……ちょっと待って。今、何流しました?コレステロールと中性脂肪、めっちゃくるやん。定期便?ああ、また来た。白くて丸い荷物。

 

コレステロール

中性脂肪

 

「必要な分だけ」って話でしたよね?なんで段ボール単位なんですか。ワタシは仕分けます。使う分、送る分、そして使われなかった分。その行き先は…ワタシの中。一時預かり?仮置き?そう信じていた。

ヒトの生活に心の中でつっこむ・・・。

・夜遅くの食事…「忙しかったから」?分かる。分かるけど、忙しさは脂を消してくれないョ。

・甘い飲み物…「疲れてたから」?疲労回復はありがたい。でも糖は回復したあと残るんやで。

・お酒…「少しだけ」?少しが毎日だと少しじゃなくなるの、知ってます?

 

……まあいいよ。ワタシがやるから。けなげに処理、黙って処理。それがワタシの仕事。

・余った糖は脂肪に変える。

・アルコールは無毒化する。

・コレステロールは調整する。

 

休み?ないョ。残業代?もらったことない。それでも働く。だって、止まったら大変やから。ただ最近、部屋が少し狭いのよ。細胞のすき間に白い影が増えている…「まだ大丈夫」ヒトはそう言う。……うん、「まだ」が、ついてる。ワタシは知っている。このままいくと、この仮置きは長期滞在になって名前がつく。この状態に名前がね。その名前は知っているけど、でも今は言わない。

これはまだ序章。右奥の部屋では静かに次の章の準備が始まっている。ヒトは今日も気づかない。少しずつ変わっていることに。次に語るとき、ワタシは少し丸くなっているかもしれない・・・つづく